期首の目標設定でよくあるのが、「顧客満足度の向上」「業務効率化を図る」といった、期末に達成したかどうか判断できない目標です。こうした目標は、評価のときに評価者の主観で点を付けるしかなくなります。

AIは、この「曖昧な目標を測れる形に直す」工程を支援できます。この記事では、渡す材料と指示の書き方、実際の添削例を示します。

測れない目標の3つの型

添削の前に、どこが問題なのかを型で押さえます。

型 例 何が足りないか
状態だけ書いている 顧客満足度を向上させる どこまで上げるか、何で測るか
行動だけ書いている 週1回の勉強会に参加する 参加した結果どうなるか
他者依存 会社の売上を1億円にする 本人の裁量で動かせる範囲を超えている

このうち中小企業で最も多いのは1つ目です。「向上」「強化」「推進」といった言葉が入っていたら、ほぼ測れません。

AIに渡す材料

渡すもの 例
本人が書いた目標の原文 「新規顧客の開拓を強化する」
等級と役割 3等級/営業担当・入社4年目
部門の目標 今期は既存深耕より新規比率を上げる
使える指標 商談化件数、受注件数、初回受注額
期間 2026年10月〜2027年3月(半期)

使える指標を渡すのがポイントです。指標のリストが無いと、AIは会社に存在しない数字を提案してきます。

指示の書き方

  • 「測定方法」「目標値」「期限」の3つを必ず含める
  • 本人の裁量で動かせる範囲に収める
  • 目標は3つまでに絞る
  • 定量目標と定性目標を混ぜる場合は、定性側にも判断基準を書く

添削の例

例1:状態だけ書いている目標

原文:新規顧客の開拓を強化する

添削後:2027年3月末までに、新規顧客からの受注を6件(月1件)獲得する。商談化した案件は30件を目安とし、進捗はCRMの商談ステータスで確認する。

例2:行動だけ書いている目標

原文:製品知識の勉強会に毎週参加する

添削後:2026年12月末までに、主要3製品の提案書を自分で作成できる状態にする。判断基準は、上長のレビューで修正指摘が2件以内であること。勉強会への参加はその手段とする。

例3:他者依存の目標

原文:会社の売上を前年比120%にする

添削後:担当エリアの売上を前年比115%にする。内訳は既存顧客の維持(前年同等)+新規3件(1件あたり平均受注額200万円)とする。

いずれも「何を・いくつ・いつまでに・どう測るか」が入っています。

定性目標をどう扱うか

数字にしづらい目標(後輩の育成、仕組みの整備など)は、無理に数値化するとおかしな目標になります。この場合は達成状態を文章で定義します。

例:「後輩2名が、自分の同席なしで初回訪問を実施できる状態にする。判断は、同席なしの初回訪問を各3回実施し、商談記録に不足が無いことで確認する。」

AIに指示するときは「数値化できない場合は、達成したと判断できる状態を文章で定義してください」と伝えてください。

人が必ず確認する箇所

  • 目標値の妥当性:AIは過去実績を知りません。前期実績と照らして現実的か確認します
  • 部門目標との整合:個人の目標を足したときに部門目標に届くか
  • 裁量の範囲:本人が動かせない要素が入っていないか

目標の粒度や本数の考え方はKGI・KPIの設計、目標管理制度の基本は目標管理制度の導入で扱っています。

よくある質問(FAQ)

Q. 目標は何個が適切ですか? A. 1人3つ程度までが目安です。5つを超えると、どれも中途半端になります。

Q. AIが提案した目標値をそのまま使ってよいですか? A. 使わないでください。AIは自社の過去実績を知らないため、目標値は前期実績と原資を踏まえて評価者が決めます。

Q. 目標設定の面談はどれくらい時間をかけるべきですか? A. 1人30分程度が目安です。AIで下書きを整えてから面談に臨むと、言葉の調整ではなく「なぜこの目標か」の合意に時間を使えます。

Q. 期中に目標を変更してもよいですか? A. 事業環境が大きく変わった場合は変更して構いません。ただし変更した事実と理由を記録に残し、期末の評価でその経緯を踏まえてください。

目標添削を含むAI人事評価システム「Scale人事評価」では、目標の入力画面でそのまま添削案を出せます。AI活用の全体像はAI人事評価とは?にまとめています。