人事評価コメントとは、評価点の根拠と次期への期待を評価者が文章で伝えるものです。部下が10名いる管理職の場合、1人あたり10〜20分かかると、それだけで2〜3時間の作業になります。

AIはこの工程の下書きを担えます。ただし「AIに丸投げして出てきた文をそのまま貼る」と、部下にはすぐ分かります。この記事では、使える下書きを出すための手順と、必ず人が直す箇所を整理します。

AIに渡す材料

良い下書きは、渡す材料で決まります。最低限、次の4つを渡してください。

渡すもの 例
評価項目と評価点 「顧客情報の記録:B(期待どおり)」
点数の根拠になった事実 「商談記録の入力漏れが期中3件あった」
対象者の等級・役割 「3等級/営業担当・入社4年目」
次期に期待すること 「後輩への同行指導を任せたい」

このうち根拠になった事実が最も重要です。ここが空だと、AIは一般論しか書けません。期中に記録を残す運用(月1回の1on1メモなど)があると、この材料が自然に溜まります。

指示の書き方

指示には、次の条件を入れてください。

  • 文字数(例:150〜200字)
  • 構成(例:事実 → 評価 → 次期の期待、の順)
  • 語調(例:です・ます調。断定しすぎない)
  • 禁止事項(例:人格に触れない。他者と比較しない)

条件を書かないと、抽象的で長いだけの文が返ってきます。

出力例

例1:期待どおり(B評価)の場合

期中、担当顧客からの問い合わせには当日中に回答し、対応漏れはありませんでした。一方で商談記録の入力が3件遅れ、引き継ぎ時に確認の手間が発生しています。次期は、商談当日中の記録を習慣にしてください。後輩の同行指導も任せたいと考えています。

例2:期待を上回った(A評価)の場合

新規開拓で目標を上回り、うち2件は既存顧客からの紹介につながりました。提案前に競合の状況を調べる習慣が結果に表れています。次期は、この進め方を手順として整理し、チーム内で共有してください。

例3:改善が必要(C評価)の場合

目標に対して達成率は7割にとどまりました。訪問件数は計画どおりでしたが、提案内容が事前に準備できていない商談が複数ありました。次期は訪問前に提案の骨子を用意し、上長と内容を確認してから臨む運用にしましょう。

いずれも「事実 → 評価 → 次期の行動」の順で書いています。この順番を守るだけで、納得感は大きく変わります。

必ず人が直す3箇所

AIの下書きをそのまま使ってはいけない箇所があります。

1. 事実の正確さ AIは渡された材料の外にある事実を、もっともらしく補ってしまうことがあります。件数・時期・固有名詞は必ず確認してください。

2. その人だけのこと 一般論で終わっている場合は、本人にしか当てはまらない具体を1文足します。ここが無いと「誰にでも言える文」になり、評価者が見ていないことが伝わります。

3. 次期の行動 「頑張ってください」で終わっていないか確認します。次に何をすればよいかが書かれていない評価コメントは、育成の役目を果たしません。

やってはいけないこと

  • 評価点をAIに決めさせる:AIは事実の重みづけを判断できません。点数は評価者が決めます
  • 個人名や機微な情報を外部サービスに貼る:社内で許可された環境で扱ってください
  • 全員分を一度に生成して確認せずに配る:似た表現が並び、使い回しが分かります

AIが担うのは下書きまで、最終判断は人が行う。この線引きを社内で共有しておくと、評価の信頼を損なわずに工数だけ減らせます。

よくある質問(FAQ)

Q. AIが書いたと部下に分かってしまいませんか? A. 具体的な事実が入っていれば分かりません。逆に、事実が無く一般論だけの文は、AIを使っていなくても「見られていない」と受け取られます。

Q. 評価コメントにどれくらいの長さが必要ですか? A. 150〜250字程度が目安です。長すぎると要点がぼやけ、短すぎると根拠が伝わりません。

Q. 期中の記録を残していない場合はどうすればよいですか? A. まず評価者が思い出せる事実を箇条書きで3〜5個出してから、AIに渡してください。記録が無い状態でAIに書かせると、印象評価の文章になります。

Q. 評価コメントのAI生成は制度上問題になりませんか? A. 評価の判断を人が行っている限り、文章化の支援は問題になりません。ただし運用ルールとして「AIは下書きまで」と明文化しておくことをおすすめします。

関連する機能の話はAI人事評価とは?、目標側の支援は目標設定をAIに添削させる方法で扱っています。評価コメントの生成を含むAI人事評価システム「Scale人事評価」では、評価点と根拠メモから下書きを出す機能を標準で用意しています。