この記事の結論

評価に連動する基本給の仕組みには、大きく「テーブル連動型」と「昇給原資設定型」の2つがあります。テーブル連動型は“評価ランク→号俸増減→ピッチ(昇給単価)”で査定する分かりやすい方式。昇給原資設定型は“先に昇給原資を決めて分配する”方式で、人件費を原資内に収めやすいのが特徴です。中小企業はまず役職・等級ベースのシンプルな設計から始められます。

賃金テーブルは、評価結果を給与に変換する“換算装置”です。本記事では、2つの方式と設計の勘所を解説します。

まず押さえる3つの部品

部品 役割
評価ランク 評価点をランク(例:D〜SS)に変換し、号俸の増減を決める
ピッチ 1号俸あたりの昇給額(昇給単価)
基本給テーブル 号俸ごとの基本給を並べた表(下限〜上限)

① テーブル連動型

評価点をランクに変換し、ランクに応じて号俸を増減、ピッチを掛けて昇給額を算出する方式です。

評価ランク数は「7〜10」を推奨

5〜6ランクだと評価がB付近に集中し、頑張った人とそうでない人の差がつきにくくなります(中央集中)。10ランク程度に広げると評価がばらけ、より成果主義に近づきます。「5・7・10ランク」の3パターンを用意して選んでもらうとスムーズです。

ピッチと基本給テーブル

ピッチ(昇給単価)は、職位(例:一般2,000円/主任3,000円/マネージャー4,000円)または等級で分類します。過去の昇給実績を参考にしつつ、評価ランクの号俸増減とピッチで査定シミュレーションを行い、職位ごとのピッチを決めます。基本給テーブルは下限・上限を設け、それ以上・それ以下にならないよう設計します。

メリット デメリット
スキルアップの努力が評価に直結し、満足度が高まる 評価者が年齢・勤続年数を考慮して甘く付けると形骸化する
どのスキルが足りないかが明確で、前向きに取り組める 多面的な評価がしにくく、中心化傾向に陥ることがある

② 昇給原資設定型

先に**昇給原資(昇給率や総額)**を決め、それを社員に分配する方式です。

  • 基本給テーブルは、職位ごとに下限・上限のみ設定(テーブルがなくても査定は可能)
  • 昇給率を査定期間ごとに設定(例:基本給総額700万円×1.5%=月間昇給10.5万円)
  • 業績達成率に応じて昇給率を変える設計も可能(例:達成70%で0.8%、100%で1.5%、130%で2.1%)
  • 職位ごとの係数とピッチを組み合わせ、原資内に収まるよう分配する
メリット デメリット
全員が高評価でも昇給原資内に収まり、人件費が読める 設計がやや複雑
業績に応じて昇給率を柔軟に変えられる テーブル連動型と同様、評価の甘辛で形骸化するリスク

評価との連動:マイナス査定の扱い

号俸のマイナス査定(ダウン)を入れるかは重要な論点です。いわゆるモンスター社員に合法的に対応する手段になり得ますが、減額は10%以内にとどめ、十分な説明・評価エビデンス・改善案の提示・評価者教育をセットで行う必要があります。これらが欠けると、争いになった際に不利になる可能性があります。

役職手当は評価と連動させず、社長の裁量(部下数・予算に応じて)で設定するケースが多く見られます。

中小企業はシンプルに始めてよい

等級制度がしっかりある企業はそれに基づいて設計しますが、何もない場合、100名規模までは職位・役職ベースのシンプルな設計から始められます。現状の給与一覧をもとに下限・上限を決め、不利益変更にならない範囲で、年度ごとにより良い仕組みへ改定していけば十分です。「絶対に触ってはいけないもの」ではない、と経営者に伝えると設計がスムーズに進みます。

よくある質問(FAQ)

Q. テーブル連動型と昇給原資設定型、どちらがよいですか? A. 分かりやすさ重視ならテーブル連動型、人件費を原資内に確実に収めたいなら昇給原資設定型が向きます。業績変動が大きい企業は後者を選ぶこともあります。

Q. 評価ランクは何段階がよいですか? A. 最低7、できれば10ランク程度を推奨します。5〜6ランクだと中央に集中し、差がつきにくくなります。

Q. 等級制度がなくても賃金テーブルは作れますか? A. 作れます。100名規模までは職位・役職ベースのシンプルな設計から始められます。

Q. マイナス査定は導入できますか? A. 可能ですが、減額10%以内・十分な説明・エビデンス・改善案の提示・評価者教育をセットで慎重に行う必要があります。

まとめ

  • 賃金テーブルの部品は「評価ランク・ピッチ・基本給テーブル」
  • テーブル連動型は分かりやすく、昇給原資設定型は人件費を原資内に収めやすい
  • 評価ランクは7〜10を推奨。マイナス査定は要件を満たして慎重に
  • 中小企業は職位ベースのシンプルな設計から始め、年度ごとに改定していけばよい

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